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日本神話の最高神、そして皇祖神である「天照大神(アマテラス)」の弟で、出雲系神統の祖とされる日本神話の神様、「スサノオノミコト(須佐之男命/素戔嗚尊)」。
「古事記」においては、黄泉の国から帰ってきた「伊邪那岐命(イザナギ)」が禊をしたときに、最後に生まれ落ちた三柱の神々を「三貴子(さんきし)」または「三貴神(さんきしん)」といい、それぞれ天照大神、月読命(ツクヨミまたはツキヨミ)、そして須佐之男命(スサノオノミコト)とされています。
スサノオノミコトは、その粗暴な性格ゆえに「天の岩屋戸の事件」を起こして高天の原から追放されてしまい、出雲国で出会った「櫛名田比売(クシナダヒメ)/ 奇稲田姫」を救うため、一計を案じて八岐大蛇(ヤマタノオロチ)を退治しました。
八岐大蛇を切り刻んだときに尾から出てきたとされる草薙の剣は天照大神に献上され、三種の神器のひとつになっています。(他は勾玉と鏡)
スサノオノミコトは、ニートで我儘で乱暴で、でも涙もろくて情に厚くて勇敢で. . . と、いわゆる「困ったちゃんだけど根はいい子」という絶妙な設定のためか、日本神話においてはスーパーヒーローとして大変人気があります。
以前、スサノオノミコトを愛してやまないというポーランド人女性の方が、日本のテレビ番組に招かれて初めて日本を訪れ、出雲大社や須佐神社を参拝し、さらにスサノオノミコトの子孫(須佐神社の須佐建央さん)に会えたことに感激されていた様子が放映されていたそうです。
きっとスサノオノミコトには、どこか人を惹きつける「人間くささ」と「親近感」があるからなのかも知れません。
ちなみに私の知り合いのH房さんは、
「ギリシャ神話とかにも必ず拗らせキャラがいるように、登場人物が優等生ばかりだとお話としてつまらないからだと思う。」
と言っていました(笑)。
さて今回は、スサノオノミコトに会いに、島根県出雲市にあります「須佐神社」を訪れた記録を綴ってまいります。
出雲縁結び空港
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まずは羽田空港から飛行機に乗って「出雲縁結び空港」へ。
真冬のためかなりの雪が降っており、しばらく上空を旋回しながら滑走路の除雪が済むのを待ちました。
そして空港と出雲市駅を結ぶ路線バスに乗り、駅前のホテルにチェックインします。
この日の夜は観光せず、近くの和食レストランで夕食をとり、出雲市駅からすぐの温泉施設「らんぷの湯」さんで、ゆっくりと露天風呂に浸かって温まりました。
. . . ちなみにこのとき、山陰地方でも稀に見る大寒波が迫っていることを、私はあとで知ることになるのです。
出雲市駅からバスで須佐神社へ
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翌朝。ホテルで朝食をとって須佐神社へ向かいます。
出雲市駅前からは「佐田町須佐」行きのバスが出ていますので、それに乗って行くことにしました。
私の他には3人ほどのお客さんがいましたが、全員途中で降りてしまったため、そこからは最後まで私一人でした。
▼ 山道を進むにつれて、どんどん猛吹雪になってきて視界が悪くなり、このあとのバスは確実に運休になるのではないかと思ってしまうほどの豪雪が襲ってきたため、「こんな状況で参拝など出来るわけがない . . . 」と、私は来たことを後悔し始めました。
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私は予め、須佐神社のすぐそばに「ゆかり館」さんという旅館があることは調べておりまして、もともと参拝のあとは露天風呂に日帰り入浴するつもりでいたのですが、この猛吹雪を目の当たりにし、「まずはゆかり館さんで吹雪がおさまるまで休ませてもらい、様子を見てから須佐神社を参拝することにしよう」とバスの中で考えておりました。
しかし、終点の2つほど前のバス停を過ぎたころ、さきほどの豪雪が消え去り、まるで雪のカーテンを抜けたかのように一瞬で景色が変わってしまったのです。
わずか数秒程度の距離の間に、「猛吹雪」と「降雪も風もない空間」が隣り合わせのことなど有り得るのだろうかと、私は狐につままれたような気分になりました。
このことをバスの運転手さんに聞いてみたところ、山陰地方ではこういった断続的な雪はよくあることなのだと教えてくれました。
さすがは日本の神々が集まる出雲。これは何かいいことがありそうです(と思いたい)。
終点のバス停から須佐神社へ向かうには、たいていの場合バス停の目の前にある「スサノオタクシー」さんに乗せて行ってもらうか、3kmほど歩くかの二択になります。
▼ 須佐神社の周辺一帯には、青空が顔を出していました。
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▼ こちらは「須佐川」です。1日のうちにこんなに「須佐」の文字を見たのは初めてです(笑)。
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▼ 降り積もった雪を、お日様が優しく照らしています。
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▼ 須佐川を渡ると、須佐神社の鳥居がありました。
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鳥居をくぐる前に軽く一礼し、まずは手水舎で清めをします。
. . . 手水舎、手水舎 . . .
. . . え? 手水舎が無い!?
手水舎が無いなんてことある!?
. . . と思ったのも束の間、雪に埋もれて同化してしまい見えていなかっただけでした(笑)。
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▼ 「須佐之男命と稲田姫命の御子の子孫と伝えられる須佐家が代々仕えている神社である」とあります。
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▼ 「須佐の七不思議」がマップ付きで説明されています。
全部で「塩の井」「神馬」「相生の松」「陰無し桜」「落葉の槇」「星滑」「雨壺」です。
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▼ 拝殿でお参りをします。
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▼ そうこうしているうちに、どんどん空が明るくなってきました。
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▼ 御本殿です。日本で唯一、スサノオノミコトの御霊が祀られています。出雲大社と同じ大社造りなのだそうです。
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▼ 御本殿の別角度です。雪を照らす日の光が神々しいです。
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▼ 御本殿の裏には、強力なパワーが秘められているという御神木の「大杉」があります。
霊感がある人の場合は、ここだけひんやりとした空気を感じるらしいです。
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▼ 境内にある「稲荷社」です。
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▼ ん? あれは何でしょうか。
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▼ 「大杉さんの木精(こだま)」のお守りがありました。
お金を入れたら有難くいただきましょう。
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▼ 「須佐の七不思議」のひとつ、「相生(あいおい)の松」です。
雄松と雌松の幹が途中で合わさったもので、夫婦の契りの深さに例えてこう呼ばれます。
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▼ 「塩井(しおのい)」です。こちらでスサノオノミコトが潮を汲み、この地を清めたという言い伝えがあります。「稲佐の浜」に続いているのだそうです。
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▼ 猛吹雪の中をバスに乗ってきたので、日の光が嬉しくて境内をウロウロしてしまいます。
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▼ 本当に「晴れていて良かった〜」と興奮冷めやらぬ状態です。
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▼ 奥の方には「三穂社」があります。「三穂津姫命(ミホツヒメ)」と「大国主命(オオクニヌシ)」が祀られています。
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▼ このあと社務所にて神職の方から御守りをご授与いただいたとき、大変お寒いはずなのに、ガラス戸を開けたままスサノオノミコトについてお話をしてくださいました。あのときは本当に有難うございました。
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続いて 後編 では、須佐神社のほかに訪れたお食事処や温泉をご紹介したいと思います。